今週の"ひらめき"視点
米中対立、新たな次元に。アジアにおける台湾の地政学的重要性、高まる
8日、米国は中国製品に課している10%の追加関税を10日から25%に引き上げると正式に発表した。
その3日前、難航する交渉に業を煮やしたトランプ氏はツイッターで制裁関税の引き上げに言及、これを受けて米中合意に向けての市場の楽観は一挙に後退、株安が世界に連鎖した。それでも9日から再開される閣僚級協議が最後のチャンスとなるが、米国の強硬姿勢を受けて中国側ももう一段の報復を示唆するなど予断を許さない。
米中貿易戦争が実質的な覇権争いであることは言うまでもない。この3月、米国では各界の有識者で構成される「危機委員会(Committee on the Present Dangers)」が20年ぶりに設置された。これは国家的危機に対する政策提言機関であり、過去にトルーマン、レーガン時代にそれぞれソ連を対象に、ジョージ・W・ブッシュ政権時に対テロを対象に計3回設置されたことがある。中国に対する米国の危機感は単なる「貿易におけるwin-winの関係」では解消できない次元までに拡大しつつあるということだ。
米中は南米、中東でも対立、アジアでは台湾が“駆け引き”のカードとして浮上する。22日からジュネーブで開催されるWTO総会への招待状が6日時点で台湾に届いていない。背景には独立志向を鮮明にする民進党の蔡英文政権に対する中国側の圧力があると言われる。そうした中、台湾は中国による情報統制、世論誘導を警戒する。総統選挙を来年1月に控え、蔡政権は中国IT企業に対する規制強化に動く。一方、総統選挙では対中融和路線を掲げる国民党の優勢が伝えられる。そして、国民党の候補者には習指導部と関係が深い鴻海精密工業の郭台銘氏が有力だ。郭氏はトランプ氏ともつながる。2大国の駆け引きが続く中、台湾はどちらへ向かうのか。台湾は重大な歴史的岐路にある。
今週の”ひらめき”視点 4.28 – 5.09
代表取締役社長 水越 孝