今週の"ひらめき"視点
攪乱される中東、米国一国主義のその先に落とし所はあるか
トランプ政権による対中貿易制裁のもう一段の強化に加え、米国の中東政策における強硬姿勢が世界の不確実性を高める。
米国は4月に発動したイラン産原油の全面輸入禁止措置に対する報復を警戒、空母や爆撃機をペルシャ湾に派遣するなど軍事的な圧力を強めてきた。そうした中、航行中のサウジアラビア、UAE、ノルウェーの船舶がイランに支援された武装勢力から攻撃を受けたと報じられた。また、14日にはイエメンのシーア派武装組織“フーシ”がサウジアラビアの石油施設を攻撃、こちらもイランの関与が取り沙汰される。
イランは米国の制裁強化に対してホルムズ海峡の封鎖を示唆していた。しかし、海上封鎖のリスクはイランも承知しており、今回の攻撃はそれゆえの限定的な威嚇行動とみることもできる。もちろん、イラン政府は武装組織への関与を否定する。とは言え、偶発的な軍事衝突も含めペルシャ湾の緊張は高まる。15日、米国は隣国イラクの米国大使館、領事館員の一部に出国を指示したという。
ホルムズ海峡の緊迫化はすなわち世界の原油供給体制にとってのリスクである。米国は振り上げた拳の落とし所を見出すためにも、イラン核合意にとどまり続ける欧州からの支持をとりつけたいところであるが、英仏独との隔たりは大きい。
一方、トランプ政権は6月のラマダン明けのタイミングで新たな中東和平案を発表するという。2017年12月にエルサレムを首都と認定し、昨年5月に大使館を移転、今年3月にはゴラン高原をイスラエル領と認定するなど、中東和平に関する国際協調体制を一方的に崩してきたトランプ氏が「究極のディール」と予告する和平提案の中身が注目される。
国際社会が“唯一の解決策”としてきた「2国家共存の原則は維持される」との見方もあるが、2期目を目指すトランプ氏にとってユダヤ票の取り込みも念頭にあるだろう。そもそも「2国家には拘らない」と繰り返し表明してきたトランプ氏だけに中東情勢は予断を許さない。
今週の”ひらめき”視点 5.12 – 5.16
代表取締役社長 水越 孝