今週の"ひらめき"視点
賃貸アパート施工不良問題、経営トップの社会的適応力の欠落が問題の本質
29日、賃貸アパート大手レオパレス21は一連の施工不良問題に関する外部調査委員会の最終報告書を公表した。
報告書は2018年に表面化した界壁(=屋根裏に設置すべき延焼防止用の仕切り壁)の未設置問題について、「建築基準法にもとづく建築確認申請を不正に取得した」と断じ、違法建築と施工不備への長年にわたる組織的関与を認定した。
そのうえで、創業者によるワンマン体制が、順法意識の欠落と品質軽視の企業風土を招いた原因であると結論づけ、経営体制の刷新とガバナンスの強化を求めた。
同社は独自の製販一体型のサブリース商法を開発、「敷金・礼金ゼロの部屋探し」を掲げて事業拡大をはかってきた。一方、事業資金の不正流用や一括借り上げ契約を巡るアパートオーナーとの訴訟などトラブルも後を絶たない。そうした中で発覚した今回の問題を受けて、レオパレス21は創業家出身の現社長を含む7人の取締役の退任を決定、社内取締役と社外取締役を同数とするなどガバナンスの強化と再発の防止に努めるとする。とは言え、引き続き現社長が相談役として経営に関与するとのことであり、創業家の影響力が温存される中、企業体質の改善がどこまで進むか疑問が残る。
ここへきて賃貸アパート大手の不祥事が相次ぐ。2018年12月、札幌で起きた消臭スプレー缶による爆発事故を契機に「アパマンショップ」一部店舗のクリーニング役務の不履行が発覚した。大東建託では、契約成立前に受領した申し込み金について、契約が不成立となっても返金してこなかった実態が表面化した。これに対して同社は、5月24日、NPO法人「消費者機構日本」からの是正要求を受け入れてすべての対象者に返金する旨、発表した。一方、強引な営業手法、苛酷なノルマに対する批判も根強い。
業界は急激な成長と競争の熾烈化、そして、需要の飽和を経験した。短期間に変動した経営環境に対する唯一の打開策としての“拡大至上主義”、言い換えれば経営トップの独善と組織全体の思考停止が問題の根源にある。
今後、内需は縮小に向かう。経営は過去の成功体験を捨て、オーナーとユーザー本位の新たなビジネスモデルを構築できるか。ここが企業としての存続条件となる。
今週の”ひらめき”視点 5.26 – 5.30
代表取締役社長 水越 孝