今週の"ひらめき"視点
東日本大震災から13年、私たちは何を伝え、何を未来へ遺すのか
1万5千人を越える命が犠牲となった東日本大震災から13年、3月11日14時46分、被災地そして日本各地で鎮魂の祈りが捧げられた。行方不明者は未だに2,520人、災害関連死は3千人を越える。原子力緊急事態宣言は発令されたままであり、福島県を中心に29,328人(2024年2月1日現在)が避難を余儀なくされている。
公共インフラの復旧、災害公営住宅の整備は既に完了した。岩手、宮城、福島3県の製造品出荷額も震災前水準を回復、コロナ禍で落ち込んだ観光宿泊者数も東北6県で震災前を上回った。浜通り地域の「福島イノベーション・コースト構想」の整備も進む。微力ながら当社も事業参画させていただいた仙台の次世代放射光施設「ナノテラス」の運用もスタートする。先端テクノロジーが集積する新たな産業基盤の形成に期待がかかる。
一方、原子力災害被災地域の復興は依然厳しい。避難指示解除エリアは段階的に拡大されつつあるが、帰還者数は想定を下回る。原子力災害被災12市町村の営農再開面積は震災前の46%(2022年度末)、福島県の沿岸漁業、海面養殖業の水揚量は22%に留まる(2022年)。ふるさと再生の担い手となるべき生産年齢人口の減少率は全国平均を大きく上回っており、高齢化も深刻だ。
記憶の継承、コミュニティの再生、心の復興も途上であり、未だに続く被災の実相と残された課題は、これからも起こるはずの全ての自然災害に共通する。数世代先へと引き継がれる原子力災害の後始末も同様だ。2024年2月29日、国土地理院の「自然災害伝承碑」に新たに4市区町村4基が追加された。これで全国598市区町村、合計2,085基となった※。目の前では能登半島で被災が進行している。もう一度、旧来の価値観を根底から揺るがした “あの日” の衝撃を思い出し、この13年という時間をどう過ごしてきたか、振り返りたい。
※ 国土地理院 自然災害伝承碑
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今週の“ひらめき”視点 3.10 – 3.14
代表取締役社長 水越 孝