今週の"ひらめき"視点

東芝、再び経営危機へ。問われるのは原子力事業の将来価値

東芝は子会社のウェスチングハウス(WH)が買収した原発建設会社CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)に関連して数千億円規模の減損が発生すると発表した。報道によれば、「メーカーであるWHと建設会社であるS&Wは従来から共同で原発開発事業を推進してきた。しかし、工期や費用等の管理においてトラブルが頻発、これらを一元管理する目的で傘下に治めた」という。そもそもの買収目的が「後ろ向き」であるとも言えるが、親会社の事業管理能力に対する批判は免れまい。

2016年3月、東芝は、原子力事業を「業績変動リスクの大きいメモリー事業を補完する安定事業」と位置づけ、2030年までに45基を新規受注する、との計画を発表した。しかし、東日本大震災以来、国内で新規需要は見込めない。結果、海外需要の取り込みが唯一の新規需要となる。政府もこれを後押しする。一方、コストに利益を上乗せして電気料金で回収する“総括原価方式”を採用する電力事業者と一体的に事業を推進してきた国内メーカーにとって、ファイナンスから建設、納入までの工程、費用管理を一貫してメーカーが手掛ける海外事業のハードルは高い。加えて、相手国の統治システムや政治体制からの影響も大きい。WHはインドで6基を受注済みであるが、新興国であればカントリーリスクは高まる。

先般、経産省は福島第1原発の事故処理費用が20兆円を越えると発表した。また、1兆円もの国費を投じてきた“もんじゅ”の廃炉も決定した。国の原子力政策が根本から修正されてゆく中、産業としての原発も重大な岐路に立つ。


今週の”ひらめき”視点 12.25 – 12.29
代表取締役社長 水越 孝