今週の"ひらめき"視点

三菱UFJ銀行と系列証券2社、行政処分。トップにある者こそ襟を正せ

6月24日、金融庁は三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券の3社に対して金融商品取引法(金商法)にもとづく業務改善命令を、持ち株会社の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に銀行法にもとづく報告徴求命令を出した。問題となったのは所謂 “ファイアウォール規制(FW規制)” と呼ばれるルールで、三菱UFJ銀行の顧客企業の非公開情報をグループ内で共有、銀行という優越的な地位を利用して証券取引等の勧誘を行った、ことが問われた。

FW規制は銀行を中心とした業界再編と金融のグローバル化を背景に規制緩和が進んできた。2022年には、上場企業については企業側からの拒否表明がなければ同一金融グループ内での顧客情報の共有が容認された。有識者による議論は「上場企業から非上場へ、いずれは中小企業や個人へ」の方向で進んでいる。とは言え、その前提として、情報共有に対する同意確認、利益相反取引の厳格な管理、優越的地位の乱用防止、情報セキュリティの強化、が求められることは言うまでもない。

メガバンクによるFW規制違反はMUFGがはじめてではない。2022年、SMBC日興証券の株価操縦を巡る捜査の過程で、三井住友銀行の顧客企業の非公開情報がSMBCグループ内で共有されていたことが発覚している。野村HDなど独立系証券が慎重な対応を求める中で、規制緩和を主導してきたメガバンク2トップの不祥事はまさに規制緩和の “前提” に対する信頼への背信であり、議論の後退は避けられないだろう。

業界や社会において、もっとも広範な影響力、もっとも大きな既得権、言い換えればもっとも強大な “権力” を持つ者たちによるルール違反や法令軽視に関する不祥事が後を絶たない。MUFGしかり、トヨタしかり、政治家しかり、役人しかり、と言えようか。一方で、“法に反しなければ” を口実に詭弁と炎上商法を弄する者たちも増殖する。驕りと独善に塗れ、フェアであることが蔑まれる社会でいいのか。しっかりしてくれよ、日本の大人たち!


今週の“ひらめき”視点 6.23 – 6.27
代表取締役社長 水越 孝