今週の"ひらめき"視点
繰り返される建設談合、一方、その背景にある制度的な“弱み”の是正を!
“課徴金減免制度”の活用を申し出た大林組が、清水、大成、鹿島との受注調整を公取委に認めた。これによりJR東海のリニア建設における不正受注問題は大手ゼネコン4社による「談合事件」へと様相を転じた。
2005年、大手ゼネコン各社は談合への決別を申し合わせたうえで、2006年に透明性のある入札・契約制度に向けての業界提言を発表した。所謂“談合決別宣言”である。しかし、問題は解決しない。これ以降、一般競争入札への大幅なダンピング応札が繰り返される一方で、名古屋市下水道、名古屋高速道路公社の工事に対する強制捜査も相次いだ。
有力政治家の威光を借りた“大物仕切り屋”はもはやいない。しかし、その「事前調整」的な体質は脈々と引き継がれている。2014年の北陸新幹線の入札談合事件、2016年の東日本大震災の被災高速道路の復旧工事談合が記憶に新しい。
談合による不正入札は市場原理を歪め、そのしわ寄せは利用者である国民が負う。共謀して費用を嵩上げし、不当な利益を業者が得ることに道理はない。受注額の“仲良し配分”などましてや論外である。ただ、高度な技術を持つスーパーゼネコンが4社に限られる現状にあって、工事規模が大きく、特殊な技術が求められ、かつ、納期に制約がある事案については仕様設計から業者選定に至る制度全体のあり方を再検討すべきかもしれない。
アイデア、技術、役務などの貢献は準備段階にあっても公正に評価されるべきで、例えば、一定水準以上の提案に対しては特定条件のもとで対価を支払っても良いだろう。発注者はすべての工程で最高水準を目指すべきであり、そのためのコストはきちんと負担すべきである。そうであってはじめて事業者のモチベーション、透明・公正な競争、高度な品質、そして、高い安全性が担保できる。
今週の”ひらめき”視点 12.17 – 12.21
代表取締役社長 水越 孝