2011年版 ハードコートフィルム市場の展望と戦略
本調査レポートでは、注目されるタッチパネル(TP)関連を中心にハードコート(HC)PETフィルム市場を取り上げました。TP関連では主力用途となるITOベース以外にも、抵抗膜TPのアイコンシートの基材として、静電容量TPではLCDからのノイズを遮断するEMIシールド基材、ITO膜の傷を防ぐ保護用、カバーガラスの飛散防止・加飾用としてHCフィルムが使われます。また、加飾用途としてはIML、IMD工法が採用される携帯電話やノートPCのハウジングにおいてもHCフィルムが使用されています。中でも市場が拡大傾向にあるのが静電容量TPのITOベースフィルムです。近年はTP及びITOフィルムの海外勢の台頭により、海外HCフィルムメーカーが参入してきました。対する日本メーカーは歴史や技術力を背景に、依然として高い競争力を保っています。ただ、TPセンサーでは現在、ガラスVSフィルムというセンサー素材の競合があり、今後の市場の行方についてはHCフィルムの優劣や競合関係だけでは語ることができない状況です。HCフィルムの市場拡大のためにはフィルムセンサーの拡大が必須ですが、そのために、HCフィルムメーカーは何をすべきなのでしょうか?フィルムセンサーの課題の1つはITOフィルムを供給できるメーカーが少ないことです。透過率や抵抗値に加え骨見えが問題になっているとみられますが、これを解決するためにはHCフィルムをITOの設計に合わせて作りこむことが有効な手段となります。静電容量TP向けITOフィルムは国内メーカーの多くがHCの内製を行っているという点からも、その重要性が伺えます。将来、静電容量TPに参入する新規メーカーの取り込みも視野に入れれば、ユーザーとの密な連携、関係を構築し、細かいニーズにも確実に対応していくことが重要となります。また、ガラスセンサーとフィルムセンサーの価格差が縮小、あるいは逆転する中、HCフィルムがフィルムセンサーのコストダウンにいかに貢献できるかも問われるでしょう。
調査資料詳細データ
■本資料のポイント
- ITOの設計にあわせた作りこみ、ユーザーとの連携強化が成長の鍵握る
フィルムセンサー、ITOフィルムに求められるは光学特性向上、供給能力の確保、
さらなるコストダウン、ポイントはHCフィルムの光学調整層にあり - カバーガラスの飛散防止フィルム市場拡大、額縁・ロゴ等加飾用としての採用が広がる
粘着、リリース、保護フィルム市場にも変化の兆し - LCDとTPの全面貼り進展で、ITOカバー用が不要になる可能性も
空気層+反射防止フィルムはコスト面に課題 - IML用はノートPC市場の影響を受ける一方で、アフターマーケット用の需要は増加
2011年度の市場規模は微増と推定されるも、低価格化が進行
成型性の向上、ソフトタッチなど高付加価値品への対応が問われる
EMS、ODMメーカーが独自のIMD装置導入、透明箔のニーズも高まる
■本資料の概要
第1章 ハードコートフィルム市場の展望
第2章 ハードコートフィルム市場の動向
第3章 ハードコートフィルム関連メーカーの動向と戦略
■掲載内容
第1章 ハードコートフィルム市場の展望
ITOの設計にあわせた作りこみ、コストダウンへの貢献など
ユーザーとの連携強化が成長の鍵握る
第2章 ハードコートフィルム市場の動向
1.タッチパネル関連
1-1.ITOフィルム用
海外の偏光板、バックライト関連メーカーがHC-PET フィルムに相次いで参入
(表)ITO用HCフィルム市場規模推移
(表)ITOフィルムメーカー別サプライヤー一覧
(図)ITO用HCフィルムメーカーシェア(2010年度実績)
静電容量TPのITO用は低熱収縮が1つのキーワード
(表)HCフィルム、クリアとAGの使い分け
さらなる需要取り込みには光学調整層がポイントに
(図)ITO用HCフィルムに求められる光学調整層
(図)カバーガラス一体型センサーの1例
1-2.その他(飛散防止フィルム、アイコンシート用、ITOカバー用)
(表)その他TP関連HCフィルム市場規模推移
(図)その他TP関連HCフィルムメーカーシェア(2010年度実績)
主力用途であった携帯電話、スマートフォンが静電容量TP へシフト
アイコンシート用のHC フィルムは縮小傾向
飛散防止フィルム、加飾用として市場が拡大
カバーガラス一体型センサーでは歩留まり向上に貢献か
ITO カバー用は部材点数の削減を背景に今後の需要は縮小
(表)用途別HCフィルム価格
(図)タッチパネルの一般的構造と用途別HCフィルムの定義
(表)用途別HCフィルムの基本的スペック
(図表)タッチパネル用HCフィルム市場規模推移
(表)ITOフィルム用 HCフィルム販売量推移
(表)その他TP関連HCフィルム販売量推移
1-3.HC材(塗料)
静電容量TP のITO 用HC フィルム向けでは膜厚が薄くなるものの、市場規模は拡大
(表)タッチパネル用HC材市場規模推移
2.三次元加飾フィルム
ノートPC市場の成長鈍化の一方でアフターマーケットのカバー用が拡大
2011年度のIML用HCフィルムのトータル需要は前年度比微増に
(表)IML用HCフィルム市場規模推移
(表)IML用ハードコートPETフィルム市場規模推移
IML工法は付加価値品での採用が残るものの、市場拡大にはつながりにくい
(図)IML用HCフィルムメーカーシェア(2010年度実績)
FoxconnなどEMSが成型設備導入、IMD転写箔へのニーズが変化
第3章 ハードコートフィルム関連メーカーの動向と戦略
株式会社きもと
静電容量TP市場拡大で電極用、飛散防止フィルム、カバーPETが伸長
「FPD-5」の主力製品としてHCフィルムの機能向上、拡販に取り組む
2010年のITOフィルム用出荷量は抵抗膜向けで横ばい、代わって静電容量TP向けが拡大
静電容量TPのカバーガラス向けでアイコンシート用HCフィルムが採用
東山フイルム株式会社
静電容量TP市場拡大により、HCフィルムへのニーズも変化
電極用では光学調整層の付与にも対応、AR処理のノウハウが活かされる
インサートモールド用HCフィルムはネットブック市場の縮小により需要減
2011年よりインモールド転写用HCフィルムの供給もスタート
名阪真空工業株式会社
ソリューションプロバイダーとして素材まで遡った開発にも取り組む
2010年は抵抗膜TPのアイコンシート向けが減少、飛散防止、ITOベースが増加
カラーHCなど特殊コーティングも実績化、自己治癒コートもニーズが高まる
東レフィルム加工株式会社
IML用はパソコン市場のシュリンクにより停滞
耐指紋HCフィルム、ソフトタッチタイプを開発へ
TDK株式会社
ウェットコーティングITOフィルム・スパッタITOフィルムに加え、
カバーガラス飛散防止フィルムも上市
国内外のセットメーカーとの繋がりが強み、2011年度は30万㎡以上の販売量を目指す
株式会社有沢製作所
薄膜コーティング技術を活かし、2010年にTP用HCフィルムを上市
抵抗膜TP向けに加え、静電容量TP向けの販売量も増加
2012年度は5万㎡/月を目指す
ガラスの飛散防止・加飾フィルムが国内TPメーカーに採用
日本ミクロコーティング株式会社
ニッチで付加価値の取れる市場に注力、新しいHCフィルムを開発
研磨事業で培った微粒子を含むコーティング技術に強み
グローバル機種のウィンドウでインサート成形用HCフィルムが採用
「ソフトタッチ」タイプは2011 年春に開発
遠東新世紀股份有限公司(FAR EASTERN NEW CENTURY CORPORATION)
三次元成形用は2010年に撤退し、TP用に注力
2008年よりTP用HCフィルムの販売をスタート、ITO用が約80%を占める
今後は韓国、中国への拡販を図る、静電容量TP向けでもユーザーとともに開発を推進
外貼用でも需要拡大の兆しも、ユーザーの要求に応じて臨機応変に開発
新輝光電股份有限公司(ShinBright Optronics Corporation)
新光グループのコンバーター、タッチパネル周りでの展開を加速
アイコンシート用の需要は減少、ITO用HCフィルムに注力
PETベースのAGフィルム、LRフィルムも製品化の予定
2011年末にはAG専用コーターが稼動開始
長興化学工業股份有限公司(ETERNAL CHEMICAL CO.,LTD.)
TP関連HCフィルムはアイコンシート用での採用が先行
ITO用は外観欠点のないフィルム生産が課題、2012年に上市したい考え
HC材はほとんどを自社で生産、材料まで遡った研究開発が強み
SKC Hass Display Films Inc.
2008年にHCフィルムを製品化、TP関連ではITO膜カバー用として採用
PDPフィルムフィルター向けLR-HCフィルムの採用が先行
今後はITOベース用HCフィルムに注力、早ければ2011年末より実績化の見込み
MIRAENANOTECH CO., LTD.
子会社サーフェステックのITOフィルムの競争力強化に貢献
韓国ベンチャーのInsCon社との技術提携によりウェットコート技術を確立
2011年1月にITO用HCフィルムを製品化
サーフェステックの株主LGイノテックが静電容量TPに注力
2012年は2.5万㎡/月以上のHCフィルム出荷を目指す
DIC株式会社
UV硬化型樹脂、フッ素系添加剤の合成から
ハードコート塗料まで総合的に展開
TP用HC材の販売量は拡大も、今後は様々な用途の中で優先度に応じて対応
耐指紋HC材に強み、PET基材以外のHC材も開発へ
HC用樹脂「ユニディック」ではハイソリッドタイプを試作的に展開
JSR株式会社
光ファイバー用コート材で培ったUV硬化技術を応用展開
業界でも早い段階で有機/無機ハイブリッドHC材を商業化
TP用HC材の販売量は年率20%程度の成長率を達成
高硬度タイプは鉛筆硬度4Hを実現
高屈折材料をアドバンテージに静電容量TPの需要を取り込む
大日精化工業株式会社
TACに加え、PETフィルム用HC材の開発・拡販に注力
HC材の販売量は2010年度で2,000t弱
TP関連はアイコンシート用で採用がスタート、現在はITOベースフィルム用も販売
加飾関連ではIMD用でも展開、HC材、インキ、アンカー材のセット提案が強み
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