2012年版 ポリエチレン市場の徹底分析
エチレンセンターの稼働率は誘導品の競争力に直結するが、ここ10年は稼働率の問題が顕在。こうした中、東日本大震災を契機にHDPEとL-LDPEの加工品輸入が増加、中でも汎用グレードは輸入品が定着しつつある。PE各社は特殊品を生産し、海外展開(輸出)を行ってきたが、急激な円高でこれ以上輸出を増やせない状況。国内エチレン生産も低水準に落ち込み、エチレン装置の規模縮小、PEブランドの停止が課題に。一方、太陽電池市場拡大に伴ってEVAの需要が急激に増加したが、先行きは不透明になってきている。こうした市場環境において各社の対応、戦略が注目される。
調査資料詳細データ
■本資料のポイント
- 震災を機に海外品の流入が加速
日本メーカーこそ国内需要の掘り起こしを - HDPE:国内需要は頭打ち、加工品輸入が増加、輸出量も急減する中、問われる各社の「次の一手」
ブロー用途、JPE、プライムポリマーに続き京葉ポリエチレンも新製品投入 - LDPE:フィルム分野は光学プロテクトフィルムへの取り組みがシェアの差に
各社が重点ターゲットとして挙げる加工紙、根強く残る需要
世界的にもオートクレーブは目立った増強なく、LDPEはタイト化の状況 - EVA:太陽電池は一時急激に需要増加も2011年より在庫調整局面、
高VAグレードの先行2社が圧倒的シェアを確保も、相次ぐ参入・増強 - L-LDPE:震災の影響で海外品の流入が加速も、徐々に国内品へと回帰
貼合フィルム、加工紙での展開強化は国内メーカーとして必須
ダウ・ケミカル、アジア市場で3年のうちに少なくとも販売量倍増を目指す
■本資料の概要
第1章:ポリエチレン市場の展望
第2章:種類別ポリエチレン市場の動向
第3章:ポリエチレンメーカーの動向と戦略
■掲載内容
第1章:ポリエチレン市場の展望
震災以降、以前にも増して厳しいポリエチレン事業
需給バランス改善は喫緊の課題も、マーケットを創り出す地道な取り組みも求められる
第2章:種類別ポリエチレン市場の動向
1.HDPE市場の展望
国内需要は頭打ち、加工品輸入が増加、輸出量も急減する中、問われる各社の「次の一手」
旭化成ケミカルズ、プライムポリマーのメタロセン系HDPE、東ソーの「HMS-PE」に続き
京葉ポリエチレンも3段重合、チーグラー触媒の改善により新グレードの商業生産開始
フィルムの需要確保、ブローなど成長分野の取り込みが総出荷シェアの差に
フィルム分野は各社が汎用品の販売絞り込み、利益確保を重視した戦略が加速
トータル販売量が大幅に縮小する中、京葉ポリエチレンは2005年当時の販売量を維持
プライムポリマーのメタロセン系HDPE「エボリューH」がブローでの展開を加速
京葉ポリエチレンもブロー用新グレード投入により大幅拡大を目指す
射出成形はPETボトルキャップが牽引も、パレット向けは伸び悩む
旭化成ケミカルズの架橋PE向け「クレオレックス」は伸びが鈍化
配水管の震災特需は東ソーがメインに取り込む
2011年は漁網で震災特需あり、不織布向けは国内需要が伸び悩む
一方で海外進出したユーザーに紐づくメーカーは輸出が増加
2.LDPE市場の展望
世界的にもオートクレーブは目立った増強なく、LDPEはタイト化の状況
国内のチューブラーはEVAとのスイングプラントが増加
EVAに注力するメーカーのシェアが縮小する一方で、JPEのシェアが拡大
住友化学は2位に向上も、「EPPE」への置き換えが進む
フィルム分野は光学プロテクトフィルムへの取り組みがシェアの差に
各社が重点ターゲットとして挙げる加工紙、根強く残る需要
JPEはここ数年継続的に成長、住友化学は2008年から販売量が急増し2位へ
景気の影響で電力用電線の市場規模が減少、電線被覆向けLDPEも影響を受ける
エコ電線は官公庁での需要は増加も、民間への普及は限定的
3.EVA、エチレン系コポリマー市場の展望
太陽電池は一時急激に需要増加も2011年より在庫調整局面、今後2~3年は続くか
ただし需給バランスの拮抗で価格は安定的に推移とみられる
旭化成ケミカルズ及び東ソーがチューブラーで、住友化学がオートクレーブで能力増強
EVA以外の封止材原料、三井DPC及びダウ・ケミカルがシートで供給開始
高VAグレードの先行2社が圧倒的シェアを確保
住友化学「EPPE」の農PO置き換えが進展、海外でも拡販
EEAは三井DPCが輸入品販売に切り替え、ダウ・ケミカルがプロモーション強化
4.L-LDPE市場の展望
東日本大震災の影響で海外品の流入が加速も、徐々に国内品へと回帰
貼合フィルム、加工紙での展開強化は国内メーカーとして必須
住友化学が2008年末にペトロ・ラービグでのC4L-LDPE生産スタート
国内ではプライムポリマーがメタロセンL-LDPEの能力増強
日本ユニカーが事業再編に先駆けC6L-LDPEの生産、チーグラー系触媒から撤退
旭化成ケミカルズも2009年下期に販売を停止
プライムポリマーが二軸延伸対応「エボリュー」で貼合フィルムをさらに薄肉化
JPE、ダウ・ケミカル等の攻勢に対し、「エボリューP」の本格展開を開始
一般フィルム向けは各社が販売絞込みを行ったため相対的にJPEのシェアが向上
東ソーが少量多品種対応、カスタマイズ対応を強みに押出ラミ向けシェアが伸長
5.V-LDPE、プラストマー市場の展望
プライムポリマーが新規メタロセン導入で「エボリューP」を刷新
高速充填シーラント、押出ラミ分野では混戦状態
第3章:ポリエチレンメーカーの動向と戦略
日本ポリエチレン株式会社
クロム系HDPE、クリーン対応、メタロセンポリエチレン等
得意技術を活かして高機能化を加速
クロム系HDPE、PFT用途の販売実績が5万tまで拡大
フィルム用途は利益確保難しい汎用を追わず高機能品に注力
LDPE、プロテクトフィルム向け、押出ラミネート向けは好調
EVAは低VAグレードを中心にニッチ用途を幅広く展開
太陽電池封止材向けは魅力的と認識しつつも、強みを活かせるLDPEを優先
L-LDPEは顧客の製品開発にまで踏み込んだ提案で需要取り込みを狙う
「ハーモレックス」は貼合フィルム、押出ラミで大幅増
株式会社プライムポリマー
触媒技術を最大限に活かし、高付加価値品の拡充加速
「エボリュー」生産能力増強の一方で、HDPE設備廃棄を検討
新規メタロセンHDPE「エボリューH」は小型ブロー向けで先行
今後は大型ブロー、射出成形分野も含めて拡販
「エボリュー」の次世代品を開発中、LDPE代替含めシーラント分野の取り込み狙う
溶液法への新規メタロセン触媒導入により「エボリューP」の本格的な展開開始
低温成型性の向上でシーラント用途での拡販進める
住友化学株式会社
「ラービグ第2期計画」発表、グローバル化強める
10万t/年の気相法プラントは「EPPE」専用に
2011年9~10月の定修時に設備改良でEVA増強、能力は計4万t/年へ
TPCではEVA設備がフル稼働、さらなる増強を検討
ペトロ・ラービグでもLDPE/EVA生産か
「EPPE」は国内・海外で順調に成長、特に海外農POのEVA代替で伸ばす
EVAは太陽電池封止材向けに特化、グローバルでトップシェアを確保
低密度領域の「エクセレンVL」「エクセレンFX」は減少
日本ユニカー株式会社(ダウ・ケミカル)
事業再編で電線被覆など競争力のある製品の輸入が加速
2008年に販売・研究部門をダウ・ケミカル日本へ移管
これに先駆けてチーグラー系C6L-LDPEなど収益性の低い製品からは撤退
エコ電線は民間への普及は限定的も官公庁向け需要を取り込み順調に拡大
一方、ロースモークグレードは苦戦
L-LDPE、貼合・一般フィルム及び加工紙分野からは撤退、電線向け輸出に注力
超高圧電線の定期代替需要でLDPE電線被覆分野のシェア確保
EVAはカードラミの輸出に期待、太陽電池封止材向けにも供給スタート
特長あるEEAは海外展開含めてさらに強化する方針
東ソー株式会社
スペシャリティーメーカーとしてのポジション確立を進める
LDPE、EVAは小~中規模のまとまった生産拠点が強み、課題はHDPEの特殊化
HMS-PEはLDPE代替押出しラミをターゲットに展開、発泡用途にも注力
チーグラー系を含めHDPE特殊化率5割を目指す
EVA生産とのバランスでLDPEトータル販売量はここ数年減少傾向
食品用紙カップと医療容器での採用が拡大
EVAは2011年に太陽電池の過剰在庫が表面化、再び成長局面に入るのは2013年後半と予測
高VAグレードで差別化を推進
L-LDPEは食品包装のラミネート用、医療容器に注力しここ数年販売量が拡大
旭化成ケミカルズ株式会社
付加価値品中心のプロダクトミックス、メタロセンHDPEの次の用途が課題
2011年3~4月にEVAの高濃度化設備を導入し高VAグレードの生産能力アップ
「クレオレックス」はパイプ向けで伸びが鈍化
液晶用保護フィルム及び発泡用途の開発に注力
太陽電池封止材向けEVAは中国メーカーを中心に採用獲得、今後は国内向けに注力
EVA増強でLDPE販売量減少も、現在の需要は確保する考え
特にボリュームゾーンであるフィルム、加工紙分野でクリーングレード拡充目指す
宇部丸善ポリエチレン株式会社
「日本一の特殊ポリエチレンメーカー」を目指して展開
ユーザーフォロー重視しながら合理化進展、ここにきてEVAシフト
2012年8~9月に高圧法3系列目のスイングプラント化予定、EVA能力は55,000t/年へ
LDPEでは改めて加工紙向けを狙う、ニーズを吸い上げ丁寧に対応
2009年より太陽電池封止材向けEVAの供給をスタート
LDPEの縮小を食い止めるため、EVAの輸出を積極化
一般フィルム向け汎用品は販売を絞り込む一方、シーラント、軟包装向けが増加
京葉ポリエチレン株式会社
丸善プラントにJNCのバリエーション化志向を導入
3段重合で特殊品の商業生産を開始
特殊ブローグレードで求められる高剛性、高ESCRに対応、2011年から販売量拡大
海外の攻勢厳しいフィルム向けは震災を機に大幅減
3段重合による特殊フィルムグレードは6μmの薄肉化に対応
ブレンド用途に次世代チーグラー触媒を導入、PPの高溶融・高張力をサポート
2010年にペレットのブレンド・配合ラインを導入
JNCファイバーズ向け繊維グレードの輸出が増加、今後はフィルター分野に期待
その他は既存用途で比較的安定した需要を確保
三井・デュポン ポリケミカル株式会社
LDPEの販売量を縮小し、EVA、特殊コポリマーへウェイトを移す
新規アイオノマー封止材「ハイミラン® ES」を投入Z
既に大手太陽電池メーカーの薄膜系で採用
高分子型帯電防止剤「エンティラ®」は海外での採用が先行
今後は低汚染性を活かし食品・医療分野へも展開
「エバフレックス®」は電線被覆、太陽電池封止材など高VAグレードで差別化
用途、顧客開拓で市場が広がるポテンシャルは大きい
「ハイミラン®」「ニュクレル®」の優れた
包材機能(ホットタック性、接着性、耐ピンホール性等)を活かし薄肉・減容化を訴求
「CMPS®」はアジア市場で好調、ICチップのカバー材など産業資材分野の開発進める
ダウ・ケミカル日本株式会社
アジア市場、3年のうちに少なくとも販売量倍増を目指す
幅広いラインナップとサービスを供給し日本でのシェアが拡大
製品別セグメントから市場・国別で市場動向を追う
サウジプロジェクトの稼動開始を控え、マーケティング部隊強化
ポストメタロセンC8L-LDPE「エリートAT」が需要取り込みのキーになる
「アンプリファイ」、「シーリューション」も国内でのプロモーションを開始
太陽電池封止フィルム「エンライト」は北米に加え、タイ、ドイツでも増強予定
アジアでのプレマーケティングをスタート
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