調査結果のポイント
第1章 PAN系炭素繊維・複合材料市場の展望と戦略
市場成長のドライブ加速には「垂直統合」バリューチェーンの構築が重要
得意分野を活かしたCF/CFRPの連携を通じターゲットへの目線合わせを
中国政府、炭素繊維をハイエンド材料と位置付け、「カーボンバレー」PJを推進
日系CFメーカーは台頭する中国メーカーのさらに先へ、欧米・アジア市場の確実な拡大を構築
既存アプリケーションの更なる拡大が国内メーカーの短期的なターゲット
バリューチェーン全体でのCO2排出量削減もセットで考慮
EoL製品のリサイクルだけでなく製造工程における低CO2化の推進も重要
「単独・独立系」CFRPメーカーとの連携強化による広義の「垂直統合」スキームの構築
「最短」「最安」「最適」なバリューチェーンの構築によるアプリケーションの裾野の拡大
(表)アプリケーション別需要動向PEST分析表(自動車、航空)
(表)アプリケーション別需要動向PEST分析表(風力発電)
(表)アプリケーション別需要動向PEST分析表(圧力容器(水素))
(表)アプリケーション別需要動向PEST分析表(スポーツ・レジャー、産業機器)
(表)アプリケーション別需要動向PEST分析(その他)
第2章 PAN系炭素繊維市場動向
PAN系炭素繊維市場は国内メーカーが市場創出以降けん引
東レ、帝人、三菱ケミカルの3社で市場の過半数を占める
(図)PAN系炭素繊維製造工程
(表)炭素繊維の種類と用途
(表)力学特性別の分類
2024年のPAN系炭素繊維市場規模は104,400tを予測
アプリケーション別で見ても、ドローンや産業機器が堅調に伸びる
(図)PAN系炭素繊維市場規模推移
(表)メーカー別炭素繊維市場規模(2020年~2025年予測)
(表)アプリケーション別炭素繊維市場規模推移(2020年~2030年予測)
(図)アプリケーション別炭素繊維市場規模推移(2020年~2030年予測)
米国では防衛総省によるドローン政策や物流用途でドローン需要が急増
洋上風力戦略はあるが、2024年時点で10件のみの国プロ採択のため需要は見込みにくく
仏Airbusの新造機製造による炭素繊維の需要は増加する見込み
欧州で風力発電翼の長尺化における需要増はまだ時間が掛かるとみられる
韓国は長年水素に注力、水素シティなどを筆頭に圧力容器の需要がアジアで伸びる
東南アジアでは釣りや自転車といったスポーツ・レジャーが今まで以上に活況
国内メーカーの市場動向
日本も物流や観測用途向けにドローン需要が増加
高齢化社会をキーワードに医療機器分野での炭素繊維使用が期待される
(表)国内炭素繊維出荷量推移
(表)国内メーカーPAN系炭素繊維生産能力
東レはAP-G 2025中期経営計画で2025年に向けて生産量の増加を発表
UAMや圧力容器を成長ドライバーと位置付けグローバル最大手として市場をけん引
帝人は培ってきたスポーツ・レジャー用途でミズノとの連携を中心に事業拡大
今後は航空機への使用にも注力し一次構造部材への採用も狙う
三菱ケミカルGは長年にわたる航空機での採用実績を活かしモビリティ需要の開拓を模索
海外メーカーの市場動向
2023年6月にベルギーSolvayから炭素繊維事業が分離、米Syensqoとして再スタート
韓国Hyosungも水素社会の立ち上げを筆頭に大幅な増加計画を公表
(表)海外主要メーカー生産能力の一例
第3章 炭素繊維複合材料市場動向
グローバルにおける2024年のCFRP市場規模は189,818tを見込む
2023年からのCF市場減少からの回復、スポーツ・レジャー、ドローンによる用途が増加
(図)炭素繊維複合材(CFRP)グローバル市場規模(2020年~2030年予測)
オートクレーブ成形工法が長年主流であるものの
近年ではCFRPメーカーが時間の短縮・高効率化を重視したプロセスを独自で開発
(表)各種成形法の特徴
(図)CFRP成形フロー
「CFメーカー傘下型」「独立・単体型」で展開するCFRP市場のプレーヤー
傘下型は航空機やエアモビリティ、自動車をコア開発事業として位置付け
CFRPに特化しないメーカーは自社のR&D推進、国内事業の更なる拡大に向けCF市場を開拓
Tier 2 サプライヤー、合成繊維・住宅建設・特殊鋼メーカーと幅広い顔ぶれがCFに着目
(表)CFRPメーカー概要一例 ①
(表)CFRPメーカー概要一例 ②
CFRP市場の更なる拡大にはCFメーカーによる独立企業との密な連携
日本国内ならではニーズ対応にはユーザーの声を聞き川上へ伝達することが重要
第4章 炭素繊維・複合材料における環境対応
軽量化かつ高強度の“環境配慮”素材だけでの訴求でなく
サプライチェーン全体でのCO2排出量削減にも積極的に取り組む
①熱分解法
リサイクル炭素繊維製品の製造・販売を事業化しているメーカーの多くは
熱分解法を採用研究機関Fraunhoferはマイクロ波を用いた熱分解技術に着目
②化学分解法
溶剤の処理コスト課題を克服できれば省エネ技術として更なる注目度の高まりが期待
CO2排出量が一般的な熱分解法の20%以下まで抑制されるという試験結果も発表
リサイクラーだけでなく炭素繊維メーカーもリサイクル技術に着手
製品のEoLだけでなくCO2排出量削減は製造工程の過程でも注目度が高い
バイオ原材料の使用、再エネ発電、マイクロ波焼成など様々な技術が近年活発化
炭素繊維協会も2022年にSustainability Vision 2050を策定
業界内外での取り組みや連携により2050年までに95%近くのCO2排出量削減を実現計画
(表)製造段階でのCO2排出量削減への取り組みビジョン
(図)炭素繊維製造時のCO2排出原単位のビジョン値
(表)技術革新の取り組み(国家プロジェクトなどの取り組み紹介)
第5章 炭素繊維・炭素繊維複合材料関連企業の展望と戦略
東レ株式会社
炭素繊維メーカーの雄として、成長分野へ全方位で投資を行う
高性能・高品質を武器に事業の拡大を狙う
今後の成長ドライバーとして、9つのアプリケーションを掲げ、戦略的に投資を行う
2025年度において、売上収益3,700億円、事業利益360億円を目指す
今後のグローバル競争力を見据えた、炭素繊維の生産能力増強に注力
CO2排出量削減とCCUS導入により、2050年のカーボンニュートラル達成を目指す
水素社会到来に向けて、炭素繊維事業では高圧ガスタンク、ガス拡散層基材に注力する
帝人株式会社
自動車複合材料拠点の一気通貫制を目指すため、国内外を統合化
リサイクルは専門的パートナーと行うことで、PCRも有効的に使いこなす
自社でプリカーサーから成形品まで一気通貫で行う体制を国内外で構築
TATとしての統合化により、2030年までに自動車複合材料で2,000億円規模を目指す
注目されているラージトウではなく自社の強みとなるレギュラートウでの事業展開を図る
これまで培ってきたスポーツ・レジャー用途をアジアでも展開、同地域のRT市場をけん引
長年炭素繊維・複合材料のLCAにも着手、海外でもLCA算出方法を確立
自社のみでの開発でなく、他社のノウハウを融合したCF/CFRPの環境負荷低減に着目
Aligoプロセスにより低コストなCFRPや他社との差別化を図った製品群の開発を狙う
三菱ケミカルグループ株式会社
サプライチェーン川上からEoLの川下まで自社でコントロールする体制を整備
リサイクルスキームの構築とバイオの使いわけで、CF/CFRPの環境価値を強化
炭素繊維事業を3つの本部に分けることでサプライチェーンの川下の強化も図る
PAN系のRTに注力、主に航空機や高級自動車といったハイグレードレベルに着目
c-m-pやC.P.Cの完全子会社により、CFRPやSMC事業を強化
自動車だけでなく“新モビリティ分野”も新たな事業領域として開拓していく方針
環境対応にも積極的に製品を開発、DURABIOを筆頭に原料のバイオ化を狙う
CFKなどの知見を国内新菱で融合し、使用済みCFRPのリサイクルも着手
SGLカーボンジャパン株式会社
風力用途以外でのアプリケーション開拓が今後の事業継続のカギとしている
従来のRTアプリケーションにLTならではの強みを展開する可能性を示す
自動車向けの炭素繊維メーカーとしてのポジションを確立し自動車市場でのCFRPをけん引
RTの生産をストップし、LTのみの一本軸で様々なアプリケーションに着目
中国が注目する風力発電に敢えて着目せず、飛行機や自動車でのLT開発を進める
バイオマス発電や水力発電を用いた炭素繊維の製造によりCO2排出量50%削減を可能に
炭素繊維事業売却も視野に入れるものの、戦略的な用途開拓により事業継続を検討
Formosa Plastics Group
台湾唯一の炭素繊維メーカーとしてPAN系、Pitch系の両方を均等に生産
ASEAN市場での事業展開を見据え、スポーツ・レジャーに注力
2022年に生産能力を減少させたものの、スポーツ需要の回復により2025年に増強計画
中国が競合になるであろう風力発電翼用途への注目度は低い
直近で開発したTC880は航空機にも使用できるグレードとして展開
リサイクルには関与せず、バイオANの調達による低CO2化を図る
今後は自社の拠点でのISCC PLUS取得も視野に入れることで中国との差別化を図る
三井化学株式会社
自社が強みとするPP事業を用いて炭素複合材料TAFNEX®を開発
糸メーカーとして省エネに焦点を当てた装置開発も開始
オレフィン事業の更なる拡大に向け、炭素繊維材料に着目
先駆けとなる熱可塑性樹脂を用いたCFRPの研究開発に2014年より開始
これまでの自動車へのPP採用実績を活かしモビリティ用途に着目
日本の物流で必要とされる“決まったルート”をカギに自動配送などのモビリティを狙う
2024年6月には子会社アークとToyotaのFortunerコンセプトモデルにCFRPが採用
CFRPの開発だけでなく省エネ技術を用いた炭素繊維原料の開発にも着手
マイクロ波化学のマイクロ波を用い耐炎化・炭化プロセスを一貫化することで省エネを実現
三井化学の素材技術とアークの設計製造技術を活かし、ドローンブレードを開発
サンプルワークは既に開始しており、2025年以降の量産化を目指す
株式会社チャレンヂ
航空宇宙防衛関連部品が量産フェーズへ
クリーンルームの導入等、設備投資も本格化
CFRPのモノづくりに関わる知見・ノウハウが強み
PCMを独自技術と位置付け、ドローンのプロペラ等、量産性を活かせる用途の開拓に注力
航空宇宙防衛、自動車、eVTOLを注力分野と位置付け
航空宇宙・防衛産業対象の「JIS Q 9100」を2025年夏に取得予定
TIP Composite株式会社
幅広い分野での需要開拓を展開
2023年9月、ジーエイチクラフトの株式を帝人から譲受し子会社化
東明グループのメインセクターである航空宇宙分野でのシナジーを見込む
大阪4拠点、長野2拠点の計6拠点を通じ、柔軟な供給体制を提供
早くから手掛けるCFRTPはリサイクルの観点から引き続き開発を推進
アルミをはじめとする金属からの素材置換を様々な業界に提案
GHCの長年の開発経験も活かしながら、ドローン分野での需要開拓を推進
フドー株式会社
ワーク搬送用途部品の売上拡大と3Dプリンターを用いた成形法の事業化に注力
研究開発費の5割近くを投下し、事業基盤の強化を加速化
蓄積された設計製造ノウハウを活かし、ワーク搬送用途部品の採用拡大を目指す
訴求ポイントは、軽さに伴う生産性向上と省エネルギー、省メンテナンス
プレス成形法などと組み合わせた、独自の3Dプリンター成形法を開発
展示会や営業活動を通じて各産業界にアピールすると共に、量産体制の確立を急ぐ
佐久間特殊鋼株式会社
独自のCFRP市場創出に向け
リサイクル炭素繊維を使用した樹脂複合材料ReMax Composite®を製品化
クライアントとの強固な関係を基盤に、10年で売上倍増
次なる展開として、非自動車・非特殊鋼の取り組みにも注力
リサイクル炭素繊維の採用による、環境とコスト面が大きな特徴
2024年の本格事業化を見据え、専門チームを正式に立ち上げる
まずは高寸法精度、摺動性を活かした“少ロット特殊機能品”にフォーカスも
将来的にはモビリティ業界がターゲット、市場づくりとセットで開発販売を行う方針
スーパーレジン工業株式会社
FRPの先駆け企業として独自R&D体制を構築し、
クライアント満足を追求
大型造形品でのGFRP採用を1970年代に実現
大阪万博博覧会公開に先駆け、太陽の塔にも同社の成形品が採用
どの時代でも、多岐分野にわたるクライアントのニーズに合わせた開発・製造体制を構築
スギ由来の改質リグニンを活用し、FRPのバイオ化にも着目
カーボンニュートラル時代を見据えた低炭素化へ貢献する戦略を有する
小松マテーレ株式会社
補強や補修による長寿命化を糸口に
熱可塑性炭素繊維複合材料「CABKOMA®」の需要開拓を推進
環境配慮・持続可能性を付加価値とした先端資材製品
「CABKOMA®ストランドロッド」は軽量かつ、組紐式による美観性も特長
2019年には「耐震補強用より線」として日本産業規格(JIS)が制定
富岡製糸場など、様々な有形文化財の耐震補強工事で採用
次なる取り組みとして、老朽化の進んだ工場をターゲットに据える
鋼管柱やコンクリート柱の補修材シート「CABKOMA®シート」
作業工程の簡素化による、省人化・工期短縮に貢献
株式会社LIXIL
模範化された建築資材からの脱却に向けCFRPに着目
LIXILの“Purpose”である快適な暮らしをFORCE CARBONで提供
建築業界初の試みとして炭素繊維を用いた構造物を開発
独自開発接着技術を用いることで極限の薄さでウィンドウ・アーチでのCFRP使用を実現
意匠性を重視しアルミの使用量を最小限にしつつ荷重によるたわみという課題を解決
2024年にはパノラマウィンドウでRed Dot Design賞のBest of the Best 2024を受賞
株式会社新菱
高い生産性と品質、蓄積されたコンパウンド技術を武器に
リサイクル炭素繊維複合樹脂の生産・供給を推進
2018年よりリサイクル炭素繊維の回収、コンパウンド事業が本格始動
2023年にはPVパネルと炭素繊維の共用リサイクルプラントが稼働開始
2023年度内にリサイクル炭素繊維コンパウンド生産能力を3,000t/年に拡大予定
OA機器由来のリサイクル樹脂を使用した繊維・樹脂オールリサイクル品の需要に期待
不活性雰囲気下での熱分解による酸化ガスによる劣化の無いリサイクル炭素繊維回収に強み
三菱ケミカルグループと連携し、炭素繊維未使用分野の開拓に取り組む
富士加飾株式会社
炭素繊維の「リサイクル」にとどまらず、製品の「循環」まで見据えた
製品およびシステム開発で他社とは一線を画した展開を推進
価格、性能、LCAなどリサイクル炭素繊維ならではのメリットの訴求で
バージン材の代替ではない独自の市場開拓に取り組む
独自の熱風循環方式により成形前の繊維配列のままで劣化の無い高純度なrCFの回収を実現
rCF単体ではなく、ペレット、不織布、織物など多様な形態の加工製品として展開
2022年にはrCFの量産・拡販を担う子会社富士デザインを設立
材料メーカー、製品メーカーとの協業によるサステナブル製品の社会実装への取組みを強化
第6章 中国炭素繊維市場動向(参考情報)
1. 市場動向
1-1. 市場規
1-1-1. 中国能源
1-1-2. 2023年全球碳纤维复合材料市场报告
1-2. 用途別需要量
1-2-1. 中国化工信息中心
1-2-2. 2023年全球碳纤维复合材料市场报告
1-3. 省別取り組み状況
1-3-1. 吉林市
1-3-2. 山東省
1-3-3. 江蘇省
1-4. 生産能力
1-4-1. RT炭素繊維メーカー
1-4-2. LT炭素繊維メーカー
1-4-2-1. 上海石化
1-4-2-2. 吉林化纤
1-4-2-3. 兰州蓝星
吉林化繊集団有限责任公司(吉林化繊)(Jilin Chemical Fiber Group Co., Ltd.)
原糸から複合材料まで幅広い製品展開と技術力で
中国のカーボンバレー創出を目指す
中复神鹰碳纤维股份有限公司(中复神鹰)(Zhongfu Shenying Carbon Fiber Co., Ltd.)
中国でトップのRT炭素繊維メーカー
T700相当以上のシリーズが数年連続で中国市場で50%以上の市場シェアを維持
新创碳谷集团有限公司 (新创碳谷)(Newtech Group Co., Ltd.)
製品製造だけでなくCF及びCFRPのリサイクルも手掛ける
中国石化上海石油化工股份有限公司(上海石化)(SINOPEC Shanghai Petrochemical Company Limited)
大学、研究機関、企業との提携により、LT炭素繊維の生産体制を構築
新疆隆炬新材料有限公司(新疆隆炬)(Xinjiang Longju New Matrerials Co., Ltd)
5万tの炭素繊維プロジェクトを立ち上げ、RT以外にLTの開発にも成功
山东国泰大成科技有限公司(国泰大成)(Shandong Guotai Dacheng Technology Co., Ltd)
2023年から炭素繊維の生産が本格化
江苏恒神股份有限公司(恒神股份)(Jiangsu Hengshen Co., Ltd.,)
ZA800に使用される炭素繊維材料を供給する唯一のサプライヤー
威海光威复合材料股份有限公司(光威复材)(Weihai Guangwei Composites Co., Ltd.)
威海光威グループ力を活かし炭素繊維チェーンを構築
兰州蓝星纤维有限公司 (兰州蓝星)(Lanzhou Bluestar Fiber Co., Ltd.)
2023年6月から新規2,500t/年ラインが稼働
中简科技股份有限公司(中简科技)(Sinofibers Technoiogy Co., Ltd.)
中国の航空宇宙産業向けのハイエンド炭素繊維の中核サプライヤー
长盛 (廊坊)科技有限公司(Chang Sheng Science and Technology Co., Ltd.)
2024年からフェーズIII 2,600t/年ラインの構築へ