2024年版 ペロブスカイト太陽電池・部材市場の展望と戦略

ペロブスカイト太陽電池は薄型・軽量・柔軟で設置場所を選ばず、高効率であるという点が注目されている。日本においては太陽電池メーカーだけでなく、ペロブスカイト層や電荷輸送層の原料である試薬を始め、モジュールを構成する基材(ガラス、フィルム)、バリアフィルム、透明導電性フィルム、カバーフィルムなどを生産する材料メーカー、部材メーカーが数多く存在し、国産の次世代型再生可能エネルギーとして早期の産業化に向け国を挙げた施策が進められている。
経済産業省が打ち出した「2030年までの早期にGW級の量産体制構築」という方向性に応え、モジュールメーカーサイドでは発電効率向上に向けた開発が進み、2025年から2026年にかけて、量産化を見据えた設備投資やテストマーケティングの開始が発表されている。一方で、フィルムタイプでの耐久性やコスト、コンバーターのキャパシティ確保などが喫緊の課題となっているが、部材メーカーの中には「現状の設備・技術のままでは解決にも限界がある」との声も聞かれる。
本企画では、日本国内のペロブスカイト太陽電池市場に参入するモジュールメーカー、研究機関に加え、バリアフィルムや透明導電性フィルムなどの部材メーカーにもヒアリングを実施し、マーケット動向、技術動向、参入企業・研究機関の動向について分析・考察を加え、ペロブスカイト太陽電池及びその部材の市場を取り巻く環境や見通しを分析する。

発刊日
2024/10/31
体裁
A4 / 156頁
資料コード
C66116200
PDFサイズ
39.7MB
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調査資料詳細データ

調査概要
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調査目的:国内のペロブスカイト太陽電池メーカー、部材メーカー、大学による研究開発、事業開発の動向と今後の施策を徹底調査し、さらに周辺調査を行うことで、日本国内におけるペロブスカイト太陽電池及びその部材市場における現状と、今後の動向の把握を目的とする。
調査対象
ペロブスカイト太陽電池
バリアフィルム
透明電極フィルム
カバーフィルム
バリアフィルム及び透明電極フィルムの基材
調査方法:弊社専門調査員による直接面接取材をベースに、文献調査を併用。
調査・分析期間:2024年8月1日~2024年10月25日

調査結果サマリー
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ペロブスカイト太陽電池・部材に関する調査を実施(2024年)
ペロブスカイト太陽電池の事業化に向け、実証実験やテストマーケティング、量産を見据えた設備投資が進展
~2040年度頃にはギガワット級のPSCによる新規導入容量の確保が見込まれる~​

資料ポイント
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  • メガワット級の発電量確保は2040年前後に?既存の太陽電池や海外勢とは”戦わない戦略”に日本の勝ち筋あり
  • GI基金事業が進展、ヨウ素技術開発から社会実装を見据えた実証ステージへ意向
  • 耐荷重制限・凹凸・曲面、垂直面、少量多品種などへの対応を可能にするコンバーティング技術が海外勢とは一線を隠す日本独自の高付加価値PSCを実現
  • 現状のフィルム部材のコストとキャパがGW級の発電量確保のネックに、国主導の喚起策や官民の連携を進め、需要拡大のスパイラルを起こせ!
  • フィルム型、ガラス型は「競合」ではなく「最適化」。既存の代用電池の代替ではないPSCならではの活用方法の模索を
  • バリアフィルムでは発電コスト14円/kWhの達成に向け10-4g/㎡/dayの性能とコストダウンを両立する技術的ブレークスルーが求められる
  • 電極フィルムに求められる抵抗値は15~20Ω/□以下、ITOフィルムで実証進むも低抵抗で印刷可能という点からAgNWなどの非ITO系も期待される

リサーチ内容

調査結果のポイント

第1章 ペロブスカイト太陽電池・部材市場の展望と戦略

GW級の発電量確保は2040年前後に?
既存の太陽電池や海外勢とは“戦わない戦略”に日本の勝ち筋あり
日本発の高効率な次世代太陽電池としてPSCへの期待高まる
参入各社で実証実験やテストマーケティング、量産を見据えた設備投資が進展
  (表)結晶Si太陽電池とペロブスカイト太陽電池の比較
PSCによる発電量は2035年に240MW、2040年に1.5GWに達すると予測
拙速な拡大志向は価格競争=結晶Si太陽電池での失敗再来のリスクも
  (表)太陽光発電の国内新規導入量とペロブスカイト太陽電池のシェア推移(予測値)
荷重制限、凹凸・曲面、垂直面、少量多品種などへの対応を可能にする
コンバーティング技術が海外勢とは一線を画した日本独自の高付加価値PSCを実現
現状のフィルム部材のコストとキャパがGW級の発電量確保のネックに
国主導の喚起策や官民の連携を進め、需要拡大のスパイラルを起こせ!
  (図)太陽光発電新規導入量とペロブスカイト太陽電池のシェア推移(予測値)
    住宅用(10kW未満)
    非住宅用(10kW以上)
    合計

第2章 ペロブスカイト太陽電池の動向

1. ペロブスカイト太陽電池の関連政策とプロジェクト
  再生エネの主力電源化に向け
  ペロブスカイト太陽電池の社会実装が政策対応に掲げられる
  (1) ペロブスカイト太陽電池関連政策
    (図)2050年までのカーボンニュートラルのシナリオ
    (図)2050年に向けて成長が期待される14の重点分野と目標
  (2) ペロブスカイト太陽電池関連の技術開発プロジェクト
    GI基金事業が進展、要素技術開発から社会実装を見据えた実証のステージへ移行
    ① 次世代型太陽電池の開発
    (図)次世代型太陽電池の開発 プロジェクトの概要
    (表)次世代型太陽電池実用化事業の概要
    (表)「高効率・高耐久モジュール製造技術の開発」の概要
    (表)「サイズフリー・超薄型の特長を活かした
    高性能ペロブスカイト太陽電池技術開発」の概要
    ② 太陽光発電主力電源化推進技術開発
    (表)NEDOの太陽光発電に係る技術開発指針・プロジェクトの変遷
    (表)「ペロブスカイト系革新的低製造コスト太陽電池の研究開発」の概要
    (表)「太陽光発電主力電源化推進技術開発」(ペロブスカイト太陽電池)
2. ペロブスカイト太陽電池の開発動向
  高効率、高耐久、脱鉛、生産性向上に向けた研究開発が進展
  セル構造は平面ヘテロ結合方と逆構造型に集約される
    (図)PSCセルの構造
  フィルム型、ガラス型の「競合」ではなく「最適化」で
  既存の太陽電池の代替ではないPSCならではの活用方法を模索
    (表)PSCタイプ別特徴
  【大学による開発動向】
    光電変換効率を大きく引き上げるペロブスカイト層、電荷輸送層の材料開発が進展
    ペロブスカイト層の脱鉛化は光電変換効率がネックに
    鉛とスズの複合化やインクジェットによる「減鉛」化が進む
    (表)主要大学による近年の主なペロブスカイト太陽電池研究
  【企業による開発動向】
    モジュールでの光電変換効率はガラス型で18%、フィルム型で16%まで向上
    (表)ペロブスカイト太陽電池 主要企業一覧
    (表)国内ペロブスカイト太陽電池主要メーカーの概要
3. ペロブスカイト太陽電池の主な実証実験
  実際の使用環境に近い条件での発電量・耐久性を検証する実証実験が進展
    (表)ペロブスカイト太陽電池の主な実証実験

第3章 ペロブスカイト太陽電池部材の動向

1. バリアフィルムの動向
  WVTR10-4g/㎡/dayの性能とコストダウンを両立する
  技術的ブレークスルーが課題に
  薄型・軽量・フレキシブルを実現するフィルム型PSCはバリアフィルムが必須
  室温環境下で10-4g/㎡/dayがスペックの最低ラインに
    (図)ペロブスカイト太陽電池の構造
    (図)バリアフィルムの機能と用途のイメージ
  ドライプロセスではCVDの麗光、スパッタの尾池工業がサンプルワークを進める
    (表)i-components i-Barrier 代表物性
  3M、DNPはバリアフィルム単体ではなくカバーフィルムとラミしたトップカバーとして展開
  10-4g/㎡/dayクラスの現状の想定価格ではPSCの発電コスト14円/kWhの実現は困難
  技術的ブレークスルーが求められる中、ウェットプロセスでの研究開発が進展
    (表)バリアフィルムの価格
    (図)既存のウェットプロセスによるバリアフィルム
    (表)リンテック ガスバリアフィルム MS-F
    (表)ペロブスカイト太陽電池向けバリアフィルム 需要量推移(国内予測値)
    (図)ペロブスカイト太陽電池向けバリアフィルム 需要量推移(国内予測値)
    (表)フィルム型ペロブスカイト太陽電池での採用が期待されるバリアフィルム
2. 透明電極フィルムの動向
  求められる抵抗値は15~20Ω/□以下、ITOフィルムで実証進むも
  抵抗値や「印刷可能」という点から非ITO系も期待される
  TPのインセル化による需要減少でサプライヤーが減少したITOフィルムは
  現状の生産体制で1GW分の生産キャパ確保が困難な状況に
    (表)フィルム型ペロブスカイト太陽電池電極向け
      ITOフィルムの供給が可能な国内主要メーカー
    (表)ITOフィルムの価格
  ITOフィルムメーカーの中では麗光、尾池工業がPSC電極向けで展開
  15~20Ω/□の抵抗値と透明性・柔軟性を両立
  インクジェット、ダイコートが可能なAgNWは「印刷で成膜」というメリットが注目される
  マイグレーションやハロゲンによる耐久性低下への対応が課題に
  大型タッチセンサー向けに開発されたメタルメッシュフィルムも
  大面積のPSC電極としての採用に期待大
    (表)PSCセルの基材(透明電極)として期待される透明導電性フィルム
    (表)ペロブスカイト太陽電池向け透明電極フィルム 需要量推移(国内予測値)
    (図)ペロブスカイト太陽電池向け透明電極フィルム 需要量推移(国内予測値)
3. その他フィルムの動向
    PSCの効率向上、高耐久化実現につながるフィルムの検討が進む
  1.カバーフィルム
    既存の太陽電池バックシートとして実績のあるフッ素フィルムの採用を前提に開発が進展
    当面はペロブスカイト層の保護と耐久性の確保が採用検討の条件に
    AGC、クレハエクストロンなど国内フィルムメーカーによる提案が進展
    (図)ETFE「アフレックス®」の光透過性
    (表)クレハエクストロン KFCフィルム 物性表
    (表)ペロブスカイト太陽電池向けカバーフィルム 需要量推移(国内予測値)
    (図)ペロブスカイト太陽電池向けカバーフィルム 需要量推移(国内予測値)
  2. バリアフィルム・電極フィルム用基材
    セル基材の電極フィルムやカバーのバリアフィルムのベースにはPETフィルムが採用されるも
    人工衛星搭載などの宇宙用では耐放射線性に優れた透明PIが有力
    (表)I.S.T トーメッド®フィルム物性
    (図)透明PIフィルム「トーメッド」の特性

第4章 ペロブスカイト太陽電池・部材メーカーの戦略

積水化学工業株式会社
長年にわたり蓄積した封止、バリア、Roll to Roll技術の活用で
フィルム型ペロブスカイト太陽電池の量産化を目指す
化学メーカーの強みを活かしフィルム型ペロブスカイト太陽電池の耐久性向上を実現
2024年度からはNEDOの新たなGI基金事業に採択され量産化実証、フィールド実証を推進
30cm幅のRoll to Rollプロセスで発電効率15%を達成
2025年からは1mの広幅設備を導入し量産技術確立に取り組む
数多くのパートナーと連携した様々な場所・環境での実証実験が進展
2025年の大阪万博からフィルム型PSCの事業化を進める
 
東芝エネルギーシステムズ株式会社
PSCセル・モジュールの製造・供給にとどまらず
「発電した電力の有効利用」までを見据えた事業化を模索
独自の1ステップメニスカス塗布技術により703cm2サイズで16.6%の変換効率を実現
フィルム基材を傷つけないスクライブ技術や低温結晶化可能な電極などの開発も推進
2024年から屋外及び屋外での長期設置による実証実験を開始
 
パナソニック ホールディングス株式会社
「発電するガラス」をコンセプトにガラスと一体化した製品展開を進め
都市部を始めとする様々な場所でのオンサイト発電量拡大に貢献
建物壁面、窓、手すりなど既存の太陽電池では設置に適さない垂直面も活用
ガラス建材として違和感のないデザインとインクジェットによる少量多品種対応に強み
ペロブスカイト層の材料、インクジェット塗布装置、生産プロセスの最適化で高効率を実現
発電量、透過性、デザインに応じたグラフィックパターンのオーダーメイドにも対応
2024年は1m×1.8mサイズのパイロットラインを導入
2026年よりテストマーケティングを開始し早期の事業化を目指す
 
株式会社リコー
有機感光体、高速連帳インクジェットプリントなど
プリンター・複写機事業で蓄積した材料技術と装置技術をPSC開発に活用
次世代太陽電池の中でも先行して製品化した固体型色素増感太陽電池で蓄積した
材料技術とモジュール作成技術をペロブスカイト太陽電池開発に活かす
インクジェットプリントによる全層連続成膜、レーザーエッチング不要な回路形成など
高耐久・高生産性の両立を実現する装置技術に強み
屋外、屋内、さらには宇宙空間まで、多種多様な環境・条件下で
発電量、効率、耐久性などを検証する実証実験を推進
 
東京大学 先端科学技術研究センター 瀬川浩司 研究室
有機系太陽電池に関する幅広い研究成果の蓄積を活用し
ペロブスカイト太陽電池の高効率化と耐久性向上を目指す
PSCだけでなく量子ドット太陽電池や蓄電機能内蔵太陽電池などの次世代太陽電池が研究対象
PSCの実用化を目指す企業との連携も進める
ペロブスカイト層へのカリウムドープにより、直列モジュール(2.76cm2)での
光電変換効率20%超えを世界で初めて達成
裏面電極にITOを利用した半透明PSCの高耐久・高効率化を実現
ペロブスカイト/CIGSタンデム型太陽電池開発につなげる
蓄電機能を内蔵した色素増感太陽電池「Annabelle」が国内外で注目集める
 
京都大学化学研究所 複合基板化学研究系 分子集合解析研究領域 若宮研究室
Needs Inspired Fundamental Scienceをスローガンに掲げ
ペロブスカイト太陽電池の実用化・社会実装につながる研究を推進
溶液中で懸濁せず光変換効率を高めるヨウ化鉛、単分子のHTL材料など
有機合成化学の研究成果をPSCの高効率化実現につなげる
ペロブスカイト粒子の非鉛・減鉛化と高効率を両立する研究も進展
大面積PSCの実現に向けペロブスカイト塗布のためのインク組成や塗工条件などを見直し
モジュールサイズ370mm×470mm(G2)を実現
京大発ベンチャー(株)エネコートテクノロジーズでPSCの社会実装に向け多数の実証実験が進行
2024年内にはRoll to Roll設備導入で量産に向け弾み
 
桐蔭横浜大学
PSCのパイオニアとして高耐久・高効率化に向けた開発を推進
色素増感太陽電池、ペロブスカイト太陽電池など次世代有機系太陽電池の研究を牽引
ペロブスカイト結晶構造を安定化させる界面パッシベーション材料の研究で
PSCの高効率・高耐久化と量産安定性向上に貢献
非鉛化と平行し、鉛使用量を抑えるインクジェットプロセスでのPSC研究を進める
桐蔭横浜大学発ベンチャー企業ペクセル社を通じて研究成果の実用化に取り組む
 
東レ株式会社
高透明・低熱収の「ルミラー® Uタイプ」でPSCのデファクトを目指す
蒸着ハイバリアフィルムの開発も推進
高平滑な無粒子での製膜、熱収加工など
PSC部材用基材として求められる性能を付与したPETフィルムの提案を進める
ハイバリアと低コストを両立する蒸着ハイバリアフィルムを開発
PSCは出口用途の一つと位置付けニーズの探索を継続
 
株式会社カネカ
透明PIフィルムはFoldable端末カバーなど
ディスプレイ関連用途向けのサンプルワークを継続
NEDOのGI事業でPSCのフィルム基板事業開発を進める
ディスプレイ用光学補償フィルム、回路基板用PIフィルムなどで蓄積した技術を活用し
透明PIフィルムを開発、ニーズを吸い上げながら改良を進める
 
株式会社麗光
ハイバリア、高透明低抵抗など、フレキシブル太陽電池で求められる
高い性能を付与したフィルムを開発しユーザーへの提案を推進
長年にわたる薄膜加工技術の蓄積を生かし、OPV、PSCなど
次世代のフレキシブル太陽電池の実現に向けた高性能なフィルム開発を推進
ハイバリアフィルム「ベレアル®」は両面バリアで10-4g/㎡/dayの性能を実現
CVD蒸着によるバリア層の密着性とフレキシビリティで差別化
結晶化膜による高透明性と15Ω/□を切る低抵抗を実現したITOフィルムを開発
発電効率アップにつながるフィルム太陽電池部材として提案を進める
CVD蒸着機、スパッタ設備、ハイクリーンコーターを揃える日野工場で
世界最高レベルの高性能な機能性フィルムを生産
 
国立学校法人山形大学 有機エレクトロニクスイノベーションセンター 硯里研究室
ウェットコートでWVTR10-5g/㎡/dayレベルの超ハイバリアフィルムを実現
ペロブスカイト太陽電池の部材コストダウンのブレークスルーにつなげる
フレキシブル有機デバイスに向け、生産性の高いウェットコートでハイバリアフィルムを開発
PSC向けではNEDO GI基金事業に参画する東芝の委託を受け研究を進める
窒素雰囲気下でのPHPS塗布とVUV照射で基材上にSiNxの緻密膜を形成
 
星光PMC株式会社
銀ナノワイヤ分散液の用途の一つとしてペロブスカイト太陽電池を想定
透明、低抵抗、印刷可能などのメリットをPRし提案を進める
AgNW分散液は太陽電池の透明電極、裏面電極ともに対応可能
ワイヤの寸法、分散液の種類など多様なラインナップと幅広いニーズへの対応力に強み

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