今週の"ひらめき"視点
台湾、孤立と独立の狭間の中、2020総統選挙へ
国民党の予備選に敗れ、無所属での出馬を目指していた鴻海精密工業の郭前会長が出馬を断念した。これにより国民党支持者の分断は回避されることとなり、2020年1月の総統選挙は韓国瑜氏(国民党)vs 蔡英文氏(民進党)、すなわち、親中派 vs 独立派の一騎打ちとなる情勢だ。
9月17日、中国外務省は「ソロモン諸島の台湾との国交解消を歓迎する」との声明を発表した。中国は2016年に蔡英文氏が総統に就任して以降、執拗に台湾の外交的孤立をはかってきた。まずは中南米とアフリカをターゲットに5ヶ国を断交に追い込んだ。そして、今回のソロモン諸島、これで台湾と外交関係を維持する国は16カ国、うち5ヶ国が南太平洋の島嶼国となった。中国にとって南太平洋は対米、対豪の戦略的要衝であり、インフラ開発を軸とした経済支援と最大貿易国として影響力を高めてきた。残るはキリバス、マーシャル、パラオ、ツバル、そして、ナウルである。
ちょうど1年前、ナウルで開催された太平洋諸島フォーラム(PIF)で議長国のワガ大統領は中国代表団の会議での振る舞いを「傲慢だ」と批判、「中国は友人ではない。彼らは我々を利用するだけだ」と非難した。人口わずか1万2千人の小国ナウル、その元首が見せた「主権国家の意地」はまさに小気味よかった。しかし、そのワガ大統領は2019年8月の選挙で敗れ、退陣した。南太平洋の台湾からの離反が一気に進む可能性がある。
蔡氏が「断じて拒否する」と言明する “一国二制度”、今、その象徴である香港が重大な局面を迎えつつある。それはまさに「明日の台湾」を暗示する。
米国は香港、台湾問題において中国への牽制を強める。しかし、トランプ政権の外交は相対での “ディール” が基本であり、国際社会もまた自国第一主義に閉じる。台湾の未来はまさに台湾自身の選択に委ねられる。選択を担う国民の責任は重い。しかし、であればこそ、その大きな権利を次の世代へつないで欲しい。
今週の“ひらめき”視点 9.15 – 9.19
代表取締役社長 水越 孝