今週の"ひらめき"視点

トランプ氏、相互関税を発表。米国の停滞は“日本再興”のチャンス

4月2日、米トランプ政権はすべての国・地域に対して一律10%の基本関税を課すとともに、貿易相手国の関税率や非関税障壁に応じた“相互関税”を課すと表明した。トランプ氏は「この日は長い間待ち望んできた解放の日だ」、「相互関税はアメリカにとって経済的な独立宣言である。今こそアメリカが繁栄する番であり、新たに獲得する富で、減税と国家債務の削減を実現する。アメリカは再び偉大になる」などと述べた。

公表された相互関税は中国34%、台湾32%、インド26%、韓国25%、EU20%、ベトナム、インドネシア、タイなど東南アジア諸国も軒並み30%を越える。日本は24%だ。2024年の対米輸出額は21兆3千億円、うち自動車と自動車部品で7兆2千億円、全体の34%を占める。建設用重機、光学機器、半導体製造装置の輸出額も大きい。海運・物流業界など輸出関連業界への影響も小さくないだろう。政府には“24%”の不当性を毅然と主張するとともに自由貿易への回帰を促していただきたい。

しかしながら、はたしてトランプ氏の思惑どおり米製造業は復活出来るか。高関税による物価高は消費者を直撃するだろうし、仕入れ、卸価格の突然の高騰は事業者にとってコスト増でしかない。確かに関税強化は海外から直接投資を呼び込むインセンティブにはなるが、そもそも高品質で割安な輸入品に依存してきたサプライチェーンを短期間で作り変えることには無理がある。ましてや移民を制限する施策を進めつつ国際市場で戦えるレベルまで米製造業の人件費を下げることなど不可能であろう。

トランプ氏が“先祖返り”に血道を上げているこの4年間を日本はどう活かすか。輸入を止めることなど出来ない米国においては相互関税が日本企業に相対的に有利に働くケースもあるだろう。もちろん、大半の輸出産業にとっては突然の“巨大災害”だ。であれば、国は早急に危機対応予算を組んで関連事業者を支えるとともに、TPP、RCEPといった多国間自由貿易を軸とした市場開拓、供給網の再編に向けた支援の枠組みを整えていただきたい。いずれにせよこの4年間は事業構造改革を進め、国際的なプレゼンスを高める絶好の好機である。私たちはそれぞれの立ち位置においてこのチャンスを活かすべく、じっくりと“その先”を見据えて行動してゆきたい。


今週の“ひらめき”視点 3.30 – 4.3
代表取締役社長 水越 孝

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